豊岡教室の3年生はもうすぐ中間テストを迎えます。理科の試験範囲には「イオン」が含まれています。この「イオン」は、かつてのゆとり教育で教科書から姿を消していたこともあり、現在では多くの中学生が難しいと感じているようです。

先日の授業で、塩化ナトリウムNaCl(食塩)は陽イオンであるナトリウムイオン(Na+)と、塩化物イオン(Cl-)からできていて、この2つのイオンが電気の力で引き合っていて、結晶をつくっている話をしました。

 

講師:「この前の実験で、塩化ナトリウムを水に溶かしたときに電流は流れたかな?」


塾生:「うん、食塩は流れた。」


講師:「こういう物質をなんて言ったかな?」


塾生:「電解質。」


正しく答えてくれたので、ほっとしました。

 

講師:「ところで、水に溶けた時点ですでに分かれたイオンの状態になっていて、電流を流さなくてもナトリウムイオンと塩化物イオンは水中で引き離されて存在しているからね。」

と私が教科書的な発言をした後に、ふと疑問に思ったことがありました。

『なんで水に入れただけで電離(イオンに分かれる)するんだろう?』ということです。
お互いプラスとマイナスで引き合う力で強く結びついている(イオン結合)のに、電気的に中性であるはずの水H2Oに入れてこの結びつきを引き剥がせることが不思議に思えたのです。

 ちょっと自分で考えてみたのですが、分かりそうになかったので、手当たり次第に文献に当たってみたところ、答えが見つかりました。

(※少し説明が長くなりますので、興味がある方は最後に載せたので、ご覧ください)

 

この時は、塾生に教えているつもりが、講師自身の勉強になってしまいました。

虹の風学修館では、塾生同士が学び合う授業をしています。
塾生が疑問に感じたことや分かったことを他の人に伝えたり、人の意見に耳を傾けたりすることで、理解が深まり、同時に「学ぶ楽しさ」を知ることができると我々は考えています。

 また、今回のように、講師が授業内で疑問に思って自ら勉強することもあります。
とくに理科や社会の分野では、こういった機会が多くなるのではないでしょうか。
さらに、塾生の質問にその場で答えられなくて、一度持ち帰らせてもらったり、時には塾生から勉強に限らずいろいろなことを教えられたりすることもあります。

学ぶことって、本当に楽しいと思います。

 

豊岡教室 横井


 

※〈水分子による塩化ナトリウムの電離〉

 水分子のモデルをご覧になったことがあるでしょうか。
1つの酸素原子に水素原子が2つ折れ曲がってくっついた形をしています。
つまり3つの原子が直線ではなく、ある角度を持ってつながっていて、水分子には電気のかたよりがあります(高校ではこの電気のかたよりを「極性」と習います)。

よって、塩化ナトリウムを水に入れると、結晶の表面のNa+は、水分子のマイナスに帯電した部分に取り囲まれ、結晶から引き離されます。
また、Cl-は水分子のプラスに帯電した部分に取り囲まれ、やはり結晶から引き離されます。

こうして塩化ナトリウムの結晶は、ナトリウムイオンと塩化物イオンとが水分子によって引き剥がされて、互いにくっついていられない状態になります。
すなわち、電離します。